『幸せについて本気出して考えてみた』
私が生まれる少しだけ、本当に少しだけ前に、アポロ11号は月に着陸した。
『幸せについて本気出して考えた 探していた
僕がかつて小僧の頃 イメージした壮大な
人生プランからは多少見劣りはする
案外普通だし 常識的な これまでだ
それはそれなりに そう悪くはないのさ
(略)
つまんない事 嬉しい事 繰り返して結局
トータルで半分になるってよく聞くじゃない?
そんな淋しい事 言うなよって感じだ どうにか
勝ち越してみたい 密かに全勝狙い
誰だってそれなりに人生を頑張ってる
時々はその「それなり」さえも誉めてほしい
幸せについて本気出して考えてみたら
意外になくはないんだと気が付いた
僕は幸せに対して失礼だったみたい
もう一度丁寧に感じて 拾って集めてみよう
(略)』
(タイトル:幸せについて本気出して考えてみた 作詞者名:新藤晴一)
私にもアポロ11号の月面着陸の記憶はないけれど、アームストロング船長の 「これは1人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」 という言葉は知っている程度には身近なニュースだった。それが「ずっとずっと前」と歌う彼らと、「ポルノグラフィティ」という扇情的な名前、それを自分たちのバンド名にする事にためらいのない程度の時代、それらは今の流行の主流が完全に自分よりも下だと思い知った点で、「アポロ」は私にとって衝撃的な歌で、少し痛みを感じつつ、歌をかみしめた。
主に作詞を担当しているギターの新藤晴一より、ヴォーカルの昭仁の方が好みだ、声だってとてもセクシーで魅力的だ。だけど、私の心をつかんだのはどちらかと言うと苦手な顔をした晴一の歌詞だった。
なんて当たり前のことを歌った歌なんだろうと思う。でも、誰もそんな風にストレートには言えはしない。てらうことなく、ストレートな言葉。「幸せ」について。
世の中の有象無象の“あーてぃすと志望”の人たちから見たら、彼らは成功者。どちらかといえば勝ち組。そんなに長年苦労してここまで来た年齢でもない。
それでも、こんな歌詞を生み出す事が出来る彼らは、扇情的なバンド名をつけざるをえなかったほど、本当は臆病な、きっと普通の青年たちなんだろうな、と、思う。
そしてきっとそれこそが、あの世代の彼らにとっては、大事な宝なのだろう。
私には言えない、表現も出来ない、大事な事たちが、彼らの歌の中で、宝石のように光っている。
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